感性が豊かになるメリットとは
芸術に触れると感性が豊かになります。
「感性」を辞書で調べると、『印象を受け入れる能力。感受性。また、感覚に伴う感情・衝動や欲望。』と出てきます。感性は英語でsensibility、「神経質な」という意味をあらわす「センシティブ」の語源でもあります。感性が豊かすぎる人は、敏感で傷つきやすいといえるでしょう。
一方で、感性が豊かになると、「風の香が春らしくなってきたなぁ」や「今夜は月が綺麗だなぁ」などというように、日常のほんのささいなことに気づくことができます。その度に小さな感動を味わうことができるので、毎日が豊かになるというメリットもあります。
アートセラピーの効果②でも触れたように、絵を描いていると様々な出来事に対してのアンテナができます。それが感性の豊かさにも繋がっているのです。
ここまでは一般的によくいわれていることですが、このページではさらに別の切り口として、脳科学の観点から感性を豊かにするメリットをお伝えしていきます。
共感覚に隠された能力
『共感覚』という能力をご存知でしょうか。
共感覚は、音や数字に色がついていたり、味に形を感じたり、というようにあるものを普通の人とは違う五感でも感じることができる人の特性のことをいいます。
共感覚テスト
5の中に2が三個混ざっています。何秒で見つけられるでしょうか?
ふつうの人は、この画像が黒一色に見えているので、2を見つけるまでに時間がかかります。
しかし、共感覚の人は一瞬で2を三個発見することができます。なぜなら、共感覚の人には下のように見えているからです。
共感覚にはいくつかの種類があり、上記のように数字に色が見える人もいれば、音階に色を感じる人、味覚が立体的に見えるというケースもあります。音に色が見えるタイプの共感覚者の中には、多言語を容易に操る人がいます。英語は緑と黄色で、中国語は青と銀色、などというように、共感覚は記憶を助ける手段としても役立ちます。
また、近年の研究により共感覚者は知能が高く、抽象的で、創造的であり、美的感受性が高いとい う結果が得られています。
(参考文献:音を聴くと色が見える:共感覚のクロスモダリティ Hearing Sounds and Seeing Colors: Cross-Modal Synesthesia長田 典子 Noriko Nagata 関西学院大学/リチャード・E・サイトウィック&デイヴィッド・ M・イーグルマン(2010).脳のなかの万華鏡, 河出書房新社)
実は誰もがもっていた共感覚
「黄色い声援」「柔らかい香り」という言葉があるように、聴覚(音)を視覚(色)で表したり、嗅覚(香り)を触覚で表現する方法は昔から無意識のうちに使われていました。
ブーバ&キキ効果
下の図形、どちらかが「ブーバ」で、もう一方は「キキ」です。どちらがどの名前でしょうか。
この実験では、常用語に関わらず98%の人が左がブーバで、右がキキだと回答します。これは発音体感と呼びますが、論理的な根拠はなく、なんとなく直感でそのように感じるのです。これが人が本来身につけている能力です。論理的思考は左脳の役割で、直感は右脳の役割です。論理的(左脳)に正解が導き出せないときでも、右脳が機能し補いあうことで正解を導きだします。
アートセラピーで共感覚を呼び覚ます
この作品は3色パステルアート教室で「マシュマロ」をモチーフに描いた作品です。(2015年5月実施)
マシュマロの見た目を描くのではなく、舌触りや、味、香りなどを表現し、五感をフル活用して描いた抽象画です。
3色パステルアートは開発者の浜端望美が共感覚の持ち主であることから、創設時の2012年から五感を描く(共感覚アート)ことをパステルアートに取り入れています。
五感を色に置き換えるポイントとその感覚さえつかめば、誰もがこのような作品を描くことができます。
普段は意識しない味のタッチや色に意識を向けることで、楽しみながら感性を育みます。1枚の抽象画として見ても、自由に描いたときには思いつかないような線や塗り方を発明し、表現の幅が豊かになり、非常に独創的な作品が完成します。
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