「絵を描いて右脳を活性化」という謳い文句をよく見かけますが、実は絵を描いていればなんでも右脳が使われているというわけではありません。
左脳的な絵と、右脳的な絵の両方があります。
左脳的な絵を描いていても、当然右脳は活性化されません。左脳は右脳よりもでしゃばりで、意識していないとすぐに左脳が優位になってしまいます。
右脳を活性化させるための描き方にはいくつかコツがあります。今回はそのうちのひとつをご紹介します。
抽象的な表現
ほとんどの人は、左脳に言語野を持っています(左利きの人のうち10%は右脳に言語野があるといわれています)。
そのため左脳は言語的であり、言葉を扱うことができるので、論理的ないわゆるロジカルシンキングと言われる考え方ができます。
一方の右脳はとても感覚的です。右脳は言葉をもたないので、文章で説明することはなかなか難しいのですが、「これはなんとなく〇〇っぽい」というような判断をすることが得意です。
言語的にはっきりと定義づけされるものではないので、非常に抽象的な表現になります。
特徴は身振り・擬音・色形
右脳的なものを表現しようとしても、右脳は言語の役割を持たないので、当然ぴったりる言葉は見つかりません。言葉にした途端に、どうしてもニュアンスがずれてしまいます。
それでもなんとかして自分の感覚を伝えたい!
そう感じた時に多くの人が咄嗟に使うのが、身振り手振りを交えた表現です。
言葉で伝わらないのならば、こんな感じと手を動かして形を表現した方が、当然相手には伝わりやすくなります。そして、その時に同時に出て来るのが擬音です。
「ふわっと」「ズドンとした感じ」「とろーんとしている」など、擬音を用いて伝えようとします。
あるいは、「ピンクっぽい」「トゲトゲした感じ」など、色や形でその感覚をなんとか表現しようとします。
ここで、「“ふわっと”って具体的にはどんな様子?」「なんでふわっとなの?」などと、論理的な説明を求める質問をされても、上手に答えることはできません。
いずれも右脳で感覚的に感じているもの。本来人によってバラバラなはずの捉え方なので、言葉で説明しようとすると論理的に破綻してしまいます。
右脳で感じているものをそのまま描く
言葉での表現(=左脳的な表現)が難しいものを伝える時に役立つのが抽象画。
たとえばこの作品は、あるピアノの演奏を聞いた感覚を描いた3色パステルアートの作品です。
左脳的な絵と右脳的な絵の違いを提唱しているベティエドワーズ博士は、著書『右の脳で描け』の中で、
左脳はしばしばでしゃばりで、右脳の役割を奪ってしまう。
右脳を呼び覚ますには左脳が嫌がる領域を実行することが重要だ。
と言及しています。
左脳が苦手な領域、つまり言葉にはできない「聴覚」や「味覚」や「触覚」、あるいは「感情」などにフォーカスしてみましょう。
そうすると、左脳が自分の役割ではないと判断して、一休みしてくれます。
そこではじめて右脳が起き出して活性化されるのです。
絵に右脳の活性化やアートセラピーとしての効果を期待するのであれば、ぜひ3色パステルアートで抽象画を描いてみてくださいね。
<参考書籍>
決定版 右の脳で描け ベティエドワーズ著