絵には、左脳的な絵と、右脳的な絵の両方があります。

左脳的な絵を描いていても、当然右脳は活性化されません。右脳的な絵を描くことを意識していなければ、すぐに左脳が優位になってしまいます。

前回の記事(左脳的な絵と右脳的な絵の違い)でも触れた通り、左脳絵と右脳絵の提唱者であるベティエドワーズ博士は、

左脳はしばしばでしゃばりで、右脳の役割を奪ってしまう。
右脳を呼び覚ますには左脳が嫌がる領域を実行することが重要だ。

と言及しています。

つまり、右脳を活性化させるには、左脳が苦手とする領域を行うことが大切。
この記事では、左脳で脳卒中を起こした女性の体験から、右脳が覚醒する絵の描き方を解説します。

 

左脳で脳卒中を起こすと境界線が分からなくなる

右脳と左脳の機能に関して、とても興味深い体験をした女性がいます。
脳科学者のジル・ボルト・テイラー。彼女は37才の時に左脳で脳内出血を起こしました。

体の境界が分からない私は、全てのエネルギーと一体となり、
それは 素晴らしいものでした。
私はこの空間を、親しみを込めラ・ラ・ランド(陶酔の世界)と呼んでいます。
(TED2008 ジル・ボルト・テイラーのパワフルな洞察の発作より抜粋)

彼女は脳科学者ですから、自分に何が起こっているのか一般の人よりも理解できていたはずです。
本来なら恐怖心にかられるような事態ですが、左脳の機能が低下し、右脳の世界へ行ってしまった彼女は安寧の空間を体験し、それをララランドと表現しています。

彼女が失ったものは、『方向定位連合野』の機能。
これは左脳の後部にあり、境界線を知る役割を担っています。

方向定位連合野があるので、私たちは目をつぶっていても自分と床との境界線が分かります。相手を見て話していても、自分と相手との境界線が分かり、良いことと悪いことなどルールとしての境界線も理解することができます。

この機能があるおかげで、左脳は区切ることが得意です。左脳は境界線を引き、ルールを設けます。
裏を返すと左脳は、境界線が曖昧ではっきりと区別ができないものを嫌います。

 

境界線を持たない絵を描こう

 

前述した通り、右脳を活性化させるには、左脳が苦手な領域を行うことが大切です。
左脳の出番がなくなることではじめて右脳が覚醒します。

たとえば、写真のようなグラデーションを用いた作品は、左脳が苦手な領域の典型例。グラデーションにはどこからが黄色で、どこからがオレンジ色で、どこからが赤、というはっきりとした境界線がありません。

なんでも区別して考えたがる左脳は、グラデーションを捉えることが苦手です。
そのため、グラデーションを描き続けていると、なんとなく頭がぼんやりしてきたり、いつの間にか時間を忘れて没頭したり、ただただ色の美しさに見とれたり…言葉では表すことが難しい幸福感や癒し、没入感を覚えます。

ソフトパステルは、作品としても美しいグラデーションを作り出すことが得意な画材。一度やり方を教われば、誰でも簡単に描くことができます。




私たちがより多くの時間を
右脳にある深い内的平安の回路で生きることを選択すれば
世界にはもっと平和が広がり、
私たちの地球ももっと平和な場所になると信じています。

 

ジル・ボルト・テイラーは、その後8年ものリハビリ生活を経て復帰。現在は自身の体験を伝える講演活動なども積極的に行なっています。

この時の体験を記した著書「奇跡の脳」の中で彼女は、右脳の世界で生きるための方法のひとつとして、“絵を描くこと”を挙げています。

3色パステルアートで楽しく絵を描きながら、ジル・ボルト・テイラーの体験したララランドの世界を味わってみましょう。

 

 

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