“3色パステルアート”ができるまで

3色パステルアートは代表の浜端望美が2012年に開発し、企画・運営の全てを手がけているものです。(代表プロフィール)

当時、心理カウンセラーとして浜端は“言葉”を使ったカウンセリングだけでなく、言葉にならない表現方法を用いた手法を求めていました。元々グラフィックデザインの仕事に従事していた経験もあり、“絵”を用いたアートセラピーに着目しました。

 

アートセラピーと分析

絵を使ったアートセラピーには様々な種類がありますが、日本で一般的なものは、箱庭療法やバウムテストに代表される”心理分析”を目的としたアートセラピーです。

絵を描くことの本来の目的は、自己表現やリラックスすること、もしくは絵を描いている時間をのものを楽しむことだと思っていたので、自分が楽しく描いた絵を分析されることや、描いた絵を色眼鏡に、その人の過去や性格を予測する方法を疑問に感じていました。

そんなときに出会ったのが“臨床美術”です。

 

臨床美術との出会い

臨床美術とは、認知症治療のためにアーティストが開発した右脳と五感を使って描くアートセラピー(芸術療法)です。
「絵を分析されるなんて余計なお世話」と公言している通り、臨床美術の現場では絵の分析は全くせず、参加者の方はみなさん楽しそうに、自由にのびのびと作品作りに励んでいました。

プログラムの中に自然と、五感と右脳を使う要素を織り込んでいることにも驚きました。完成作品はどれも個性的で、ずっと見ていても飽きない作品ばかり。プロのアーティストが開発したプログラムにその秘密が隠されていたのです。

私は臨床美術の現場で、発達障害をもった子どもや、重度の認知症の方と、作品を通してコミュニケーションをし、言葉以外の世界で関わることを学ぶことができました。

 

アートセラピストたちの現場の声

とても素晴らしいものに出会えたと思っていたのですが、臨床美術には欠点もありました。画材の量や費用・場所の関係で、継続して行うことが困難だったのです。たとえば、りんごを描くプログラムでは、人数分のりんごを買わなければいけない。水彩画を描くプログラムは、水が使える場所でなければ開催できない。

児童養護施設・クリニック・高齢者施設など様々な場所で臨床美術士として活動しましたが、材料費を捻出することができない施設や、環境が整っていない場所が多く、継続して開催することができず、悔しい想いをすることもしばしばでした。

芸術を楽しむにはお金がかかる。お金が無い人は芸術を楽しむことができない。本来はもっと身近であるはずの”描くこと”が、実際はとても難しく問題が山積みであることに気がつきました。

 

辿り着いたパステルアートという道具

そんなときに出会ったのがパステルという画材です。チョークのような素材のパステルは、軽くてどこにでも持ち運びができて、材料費もほとんどかかりません。絵の具と違って消すことができるのも魅力です。初心者に取っては非常に扱いやすい画材です。

パステルアートを教えている場所は都内だけでも多数あり、実際にそのいくつかに通うことにしました。しかし、初心者でも簡単と謳ってはいても、絵の専門家ではない私にとっては難しく、教室の指導についていけないということもありました。

そのような経験から、もっともっと誰もが簡単に描けるように、完成までの行程を削ぎ落していこう…と様々な実験をはじめました。

 

最小限の画材だけで、3色で描く

私が目指したのは、本当に絵が苦手な人でも、握力のない子どもでも、半身麻痺の人でも、お金が無い人でも、だれでもどこでも平等にアートを楽しめること。完成までの行程を削ぎ落していく中で、紙の上できれいに色が混ざるパステルの特性を活かせば、三原色だけで、十分満足のいく作品が仕上がることに気付きました。水彩画で有名なキミコ方式®や、かつてグラフィックデザインの現場で身につけたカラー印刷機の仕組みが大きなヒントとなりました。

3色に絞ったことで、色を混ぜすぎて作品が濁ってしまうこともなくなりました。緑1色をとっても、緑色のパステルで描いた緑より、黄と青を混ぜて作った緑のほうが、深みが出てよりプロっぽく仕上がるのです。

試行錯誤しながら完成させた3色パステルアートは、
材料も最小限
費用も最小限
場所も最小限。
それでも完成作品の質は落とさないように工夫を重ねました。

2012年の春、はじめて『3色パステルアート教室』と銘打ったものを、心療内科のデイサービスのカリキュラムとして実施。

その後は、病院や幼稚園、学童保育、高校、被災地の仮設住宅、高齢者施設など、様々な場所で継続して開催するまでになりました。

 

アートセラピーとしての3色パステルアート

アート×脳科学

高齢者施設のように定期的にレクリエーションを開催している場所でよく耳にするのが、「参加者の人数が回を重ねるごとに減ってしまう」という声です。「飽きてしまう」または「やる気がおこらない」ということが主な原因のようです。それらを解決するためのヒントは脳の仕組みに隠されています。

私は心理カウンセラーとして、脳科学の専門知識も身につけていました。アートと脳科学には密接な関係があります。3色パステルアートが単なるレクリエーションに留まらず、アートセラピーとしてしっかり機能するよう、脳科学に基づいたノウハウも3色パステルアートのカリキュラムに組み込みました。五感と右脳を使って描く特殊な技法もその中のひとつです。

しかし、参加者にとって3色パステルアートはあくまでも絵を楽しむ場、絵を通してコミュニケーションをとる場。「今脳の〇〇を使っている!」と意識することなく、楽しみながら描けて脳にも良い、そんな仕組みづくりを大切にしています。

 

アート×心理学

3色パステルアートはたくさんの現場での実践を経て、現在の形になりました。その中でも変わらず大切にしていることは、参加者との関わり方です。描いている途中過程はもちろんのこと、ワークショップでは毎回、描くだけでなく鑑賞会の時間を設けています。

絵はその人自身の分身のような存在です。鑑賞会には、「上手、下手という言葉を使わない」などいくつかの決まりごとがあり、他者を認め自分を認めていくプロセスを共に体験していきます。

絵という自己表現の喜びを味わい、その表現を互いに認め合う。その経験を誰もが気軽に持てることが3色パステルアートの理想とする姿です。

 

身近な人の笑顔から

私は3色パステルアートに大きな可能性を感じています。まだまだ誕生したばかりではありますが、北海道、東京、名古屋、福岡など、全国各地のインストラクターからたくさんの喜びの声が届いています。

生活の中にささやかな幸せを作る活動を一緒にしてみませんか。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
今後とも3色パステルアートをよろしくお願いいたします。

—3色パステルアート代表 浜端望美

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